タイトルの著書を書いた意図としては、以下のようなものがある。
求道者や信仰者が牧師のもとを訪れたり、電話して助言を求めたりするというとき、「解消できない悩み」がそこに当然ある。
その「解消できない悩み」は、更に二つに分かれる。
「適切な情報が得られれば、解消できる」悩みと、「情報が得られても解消できない悩み」だ。
後者の例については、特に魂の根深いところに原因があるようなタイプのもので、これは時間をかけて向き合い、神による解決を祈っていかなければ、どうすることもできない種類のものだ。
こういったものは、とにかく礼拝説教で神に導かれつつ、長期的に解決していく以外にない。
一方、適切な情報があるだけで容易に解消するような種類の悩みも、実は非常に多い。
そして、そのような情報について、求道者や信仰者は持っていないことが多いため、牧師を訪れて質問したりする。
そのような「悩みのもとになる代表的な質問」というのは、情報が得られれば解消されるので、牧師に直接会わなくても、適切な回答が得られればそれでよいということになる。
牧師自身も、いろいろと忙しいときには、そういった「情報によって解消される質問」をされたときは、正直「適切な本を読めばわかりますので、そちらを読んでください」と言いたくなるだろう。
そういった状況があることをかえりみて、特に求道者や信仰者が抱きやすいタイプの「代表的質問への回答」をまとめたのが、『信仰の救急箱』ということになる。
この著書では、求道者や信仰者が信仰の初歩的段階で最も抱きやすい疑問を取り上げて回答しており、大変多くの方に用いて頂いている。
この本を今でも読んでいる、というお声を聴くことが、ごく稀にあるくらいだ。
この本にまとめられているものは、非常に基本的なものが多いわけだが、私なりの立場はここに書かれているものと現在で、ほとんど変わっていない。
その立場というのはは、「保守寄りの穏健な福音主義(宗教改革の伝統を継承している、という意味)」というものだ。
一番最初に出版したこの著書と現在で、多少の差は出ているが、立場としてはほとんど同一であると言っていいので、この本を今から書き直すという必要は、私自身は感じていない。
私の著書はすべて、「保守寄りの穏健な福音主義」という立場から書いていると自分では思っているので、読者の視点によってそれぞれ違った形に映ることもあると思うが、自分のなかには全体として神学的・論理的一貫性がある。
せいぜいこのタイトルについて、変えたいところがあるとするなら、「表紙を今風のものに変えたい」ということだ。
今後とも、牧師の皆様は信徒の方々への牧会の一助として、信徒の皆様は基本的な疑問解消のための質疑応答集として、用いて頂ければ、ありがたい。
そういった意図のもとに書かれていることをご考慮いただき、本書をご利用いただければ幸せである。
なお、紙版のものの在庫が売切れたら表紙を変える予定でいるので、その点についてはご了承いただきたい。