齋藤真行著書紹介④  『必要なことはただ一つ』の意図

 

この著書は賛否両論の議論を、ごく小規模にではあるが起こしたという点で、これまでの段階で一定の奉仕を教会にすることができたと考えている。

 

この著書から続く三部作は、「教会の衰退の原因と対策」を主題としながら、「教会が本来の姿を取り戻す」ことを目指す論考と言える。

 

本書では

 

・日本の教会が衰退しているのは、牧師と信徒の礼拝への集中性が低下して、霊性が希薄になっているからであること。

 

・現在置かれている状況下では、すべての資源を礼拝や祈りの生活に一義的に集中することが大事であること。

 

・施設の運営、市民活動、社会問題の解決などに、教会特に牧師が御言葉の黙想や祈りから、時間と力を振り向けるほど、教会の衰退は深刻化するだけである。

 

以上のような明確な立場を打ち出している。

 

これはいろいろなところで描いてきたように、もちろん「日本の教会のコンテクスト」に該当することであって、他の国の教会にも普遍的に当てはまるものと思われては困るし、念頭にあるのは最初から最後まで日本の教会であることは言うまでもない。

 

この著書が描いているのは、教会がこの時代を生き抜くための「理念型」や「モデル」であって、「現実の実践問題」や「各論」を第一として詳細に取り上げているわけではないこともまた、著書のなかでも各所で触れられている。

 

日本の多くの教会の現状をじっくりと、公平かつ冷静な目で見ていただき、「どの教会が成長し、どの教会が衰退しているのか」について、偽ることなく見つめてほしいと願っている。

 

私なりの理解では、「成長している教会」とは「礼拝に霊的パワーがみなぎっている教会」であり、「衰退している教会」とは「礼拝の霊的パワーが枯渇し、死んだような空気が流れている教会」だ。

 

「霊的パワー」とは、祈り、説教、賛美歌、献金などすべてを通して、神ご自身の臨在が溢れ、出席者一人ひとりが神の取り扱いを受けて救われている、という恵みの現実が起こっていることにほかならない。

 

こういった霊的臨在、霊的活力といったものは、牧師と教会員一人ひとりが礼拝を通して三位一体の神ご自身を愛する日々の信仰的姿勢の蓄積として生まれてくるもので、「方法論」や「プログラム」などの問題ではない、ということを本書では力説している。

 

なによりも、こういった姿勢で教会に属する一人ひとりが生きていくためには、特に牧師は与えられている週日の時間を、神との関係を深めつつ、御言葉を黙想し、御心の実現を祈り求め、福音を宣べ伝えていくことに費やさなくてはならない。

 

そのためには、牧師は伝道や御言葉の奉仕以外のいろいろな関心事を脇へ置き、神への黙想や瞑想、祈祷や神学研究などを深めることに集中していく必要がある。

 

現実的には、牧師は保育園、幼稚園の園長や、市民活動や、地域での行事や、その他あらゆることに取り囲まれて、神と教会のために自らの時間を使う余裕を失い、また生きていくためにいつもお金がなくなる心配をしていなくてはならず、上記のような基本的な霊的修練がおろそかになってしまうような課題が存在する。

 

こういった状況をふまえて、いろいろな「礼拝・教会」とは「別の分野」であるものを、生活可能なところまでは、ある程度手放し、神と教会の事柄に集中していくことで、「霊的活力」が回復していき、教会は衰退の時代をも貫いて生きていくことができることを、示したつもりであった。

 

もちろん、本書は私がまだ経験や知識がかなり不足しているときに書いたものなので、不備や批判点なども多くあるだろうが、今後の時代を生きる教会の一つの「理念型」としては、現在でも用いられるところがあると考えている。

 

本書の主張が間違いであるとおっしゃっている方も大勢おられると思うし、私はそれについて取り立てて釈明しようとは思わない。

 

本書が間違いを示すためには最も有効であるのは、牧師が保育園や幼稚園をはじめとした園長職や、他の様々な「伝道に関連性が低い分野の奉仕」を多数引き受けている状態で、教会において着実かつ地道に受洗者が起こされ、信仰的に成長していく姿を、具体的に示していただきたいと願っている。

 

そういった状況が実現しているという実例はまったく存在しないかどうか、私にはわからない。

 

ごく少数ながら、そういった実例はあるかもしれないと思っているし、そういった教会がしっかりと立っているなら、その地域にあって神の国の希望の灯をともす拠点となっているだろう。

 

しかし、大半の教会はそうなってはいないということが実態であるなら、本書が現実に該当する蓋然性はなお高いということは、実践的領域から示されるのではないかと思う。

 

本書は理念型とはいえ、現実に実践することで立証することができるものだからだ。

 

本書がいろいろな意味で間違っていると証明されるなら、それは私にとっても喜ばしいことだ。日本の教会が成長して、神の国が広がっていくことが第一に重要なことなのだから、全体として教会が豊かに成長していく姿は、すばらしいものだ。

 

ただ、今のところそういったところが見られない限りは、本書にもまだ、果たすべき役割が残っているのではないかと思われる。

齋藤真行牧師の説教・牧会チャンネル

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