日本基督教団の特性① 「全地域伝道」


「日本基督教団の特性」について、書いてみたいと思う。

 

「灯台下暗し」のことわざにあるように、私自身「日本基督教団」という「教派」について、学ぶことはあっても、じっくりと自分の言葉で考えてみたことがなかった。

 

最近、今後の教会のことを考えていくうえで、この教派のことを考える促しも覚えているため、個人的な考えの整理のためも含めて、書かせて頂きたい。

 

なお、教派の問題というのは奥深く、非常に微妙な点も含んでいるため、ここに書いていることは私自身の「個人的見解」であり、これをだれかに押し付けるつもりもないので、ご了承願いたい。

 

ここでは教団の「強み」や「よい点」にフォーカスしているため、弱点についてはまた別に考えることする。

 

日本基督教団に属している教会としては、どんな将来像やビジョンを描くことができるのか。

 

これが極めて重要な問いとなってきている。

 

これから、この教派に属している多くの教会は、歴史的に衰退をしていくなかで、「必死に伝道するのか、統廃合するのか、無人教会となっていくのか、更なる別の道か」という今後の「方向性」をだれもが問われることになる。

 

そのとき、「日本基督教団とはなにか」ということがわかっていなければ、そもそもその問いについて考えることも難しい。

 

そのための参考として、書いてみたい。

 

まず、「宗教年間」から、教派のデータを引用してみたい。

 

これは

 

https://www.christiantoday.co.jp/articles/26725/20190408/shukyo-nenkan-2018.htm

 

のウェブサイトにあるので、ご参照ください。

 

2017年12月31日時点 クリスチャン人口

 

        教会数 教師数(うち外国人)信者数

1カトリック   785 1383(519 44万3721

2日本基督教団  1521 3298(70) 11万9223

3聖公会     279  269(29)  5万0512

4バプテスト連盟 284  444(47)  3万4830

5福音ルーテル  122   84(3)   2万1941

6セブンスデー  175   77(12)  1万4797

7同盟基督教団  245  481(84)  1万2405

8アッセンブリー 164  409(44)  1万2162

9日本キリスト教会 136  160(2)  1万1637

10イムマヌエル  114  212     1万1579

11キリスト改革派 144  112(4)  9810

12正教会     56   36(2)  9518

13日本イエス   128  216(3)  8248

14ホーリネス   161  248(7)  7594

 

以上のデータで、「日本基督教団」と他の教派を比較した場合、最も特徴的なことは、なんだろうか。

 

顕著なのは、「教会数」だ。

 

カトリック教会でさえ、全国に785個の教会だが、教団はその二倍ほどの数も教会がある。

 

一方、教団の信徒数はカトリック教会の4分の1程度に過ぎない。

 

他のプロテスタントの教派と比較しても、教団は「教会数」が突出して多い数になっている。

 

「バプテスト連盟」と比較すると、バプテストのひとつの教会の「平均信徒数」は100名を超えることになるが、一方教団の一つの教会の平均信徒数は78名程度ということになる。現住倍餐会員としては、ということだろう。

 

ところがこれは実態とはまったく異なる。

 

礼拝出席者数は、教団は『教団年間』によると2016年で「31名」だ。


この平均数も、都会の大きな教会が引き上げているものであって、教団の「地方教会」は20人以下のところが圧倒的に多い。

 

礼拝出席がある信徒数は、教団は現在50521人と、2019年教団年間にはある。

 

以上の統計から出てくるのは、日本基督教団という教派は他の教派と比較して、重要な独自性、特性を持っている。

 

それは「規模としては小さくても、どのように人口の少ない地域であっても、全国に教会を建て、礼拝を守っていく」という特性だ。

 

合理性や効率性を考慮するなら、都市部や人口密集地域に教会を建て、それをメガ・チャーチへと成長させる、そういう教会を全国の都市部に複数生み出す、というビジョンも当然ありうるし、他の教派はこういった考え方が多いように思う。

 

他の多くの教派は、教会として相当以上に大きくなる可能性のある地域にしか、教会を建てようとはしない傾向があるのではないか。

 

ひとつの教会の出席者数を多くする代わりに、教会の数を伝道の可能性の大きい人口が多い地域に集中させ、教会の数は積極的には増やさない、という道だ。

 

一方、教団の「教会数」がカトリックの2倍ほども多いということは、教団は小規模でも全国津々浦々まで教会を建て、そこで礼拝を守っていく、という理念やビジョンのもとにある、と考えていいように思う。

 

これはだれかがそのように戦略的に意図したというよりも、教会として「合同」した歴史的な「結果」であると言える。

 

ただ、そうした結果が歴史的に出ていることは、そこに神の御心や意志というものを読むことも、許されるのではないかと思う。

 

以上のような、他の教派が教会を建てないような地域にも、教会を建てていく、「すべての地域で伝道する」という理念が教団の在り方に内在しているとするなら、ここからどのような考え方が導かれるだろうか。

 

人口が少ない地域にも教会を建てていくということは、当然そこでの教会の規模はどうしても小さなものにならざるをえない。

 

「地域の人口」と教会の人数は、なんだかんだと言っても、比例関係にならざるをえない。

 

人口が多い街の教会は大きくなりやすいし、人口が少ない地域の教会は小さくなりやすい。

 

そういったところにも教会を建てるというなら、「教会同士の協力関係」がないと、その地で礼拝と伝道を推進していくこととができないことは、明白になる。

 

つまり、より人口が少ない地域の小さな教会は、牧師を養い、教会を維持することさえ難しい。

 

教団が「全地域伝道」の理念を持つとするなら、「より大きな教会が、より小さな教会を支える」ということ、そして「どの教会も福音伝道に心を注いで従事することで、日本全体の伝道の責任を持つ」という考え方にならざるをえない。

 

つまり、「各個教会の単位で伝道していくことを前提に、それを教団や教区をはじめ、教会同士の協力関係によって支えていくことができるネットワークや可能性が大きい」ことが、教団としての「強み」ということになる。

 

またなにより、地方の他の教派の教会がないようなところでの伝道の経験や知識、ノウハウを歴史的に蓄積していくことができるのが、他の教派にはすることができない、教団として独自の特性だろう。

 

日本で教団以上に力を注いで「地方伝道」に従事している教派は、存在しないと言える。これは非常に大きな点だ。

 

そしておそらく、教団の教会は日本の教派の中で最も、地方教会や他の教会を覚えて祈り、支えるために献金していると思われる。

 

前の平松という大分県知事が 「グローバルに考え、ローカルに行動する」と言ったが、これを多少展開して言うと、教団の理念はこういうことになるかもしれない。

 

「グローバルに神学し、ナショナルに(全国の諸教会のために)祈り、ローカルに伝道する」

 

教団のことを知るには、『教団年鑑』の年表や統計を眺めるのが、てっとり早いので関心のある方はご覧ください。

 



齋藤真行牧師の説教・牧会チャンネル

https://www.youtube.com/@user-bb1is6oq4x/featured

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